運が良い話

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私には重い病気を患う母がいた。
医者からは治る見込みがないと匙を投げられ、余命いくばくもないと伝えられていた。
それも昔の話だ。
母は奇跡的に病気が治った。後遺症で声は出なくなったが元気になってくれて私と父は本当に喜んだ。
母は長い闘病生活と薬の副作用で老け込んだ顔を見られたくないと狐のお面を被るようになった。
よっぽど見られたくないのか、お面は絶対に外さない。
そんな母を近所の人達も初めこそ奇異の眼で見ていたが理解が深まるにつれ誰も気にしなくなってきた。
声が出なくても、お面を被っていても母は母だ。
家族に、近所に愛される母だ。

そう言えばもう一つだけ、変わった事があった。
父が毎晩、母に油揚げを買ってくるようになった。
母は油揚げを受け取ると仮面を少し上げ、それを獣のように貪る。
「さすが稲荷のお面だ。相性の合う体なら死体でも憑りついて動いてくれる」
運が良かった。と、父は毎晩呟く。
ホラー
公開:20/10/23 19:01

どんぐり三等兵

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。

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