ゆかり箱

死んで初めて知った事実。
人はみな、死後１ヶ月間、さまざまなイベントを通して天国へ行く準備をする。

昨日は自分の人生のベスト３を選び、目に見えない存在となってそれを見にいくツアーだった。
死後の世界では時間、空間の制約を超える。

結婚式…自分の若さに驚く。綺麗な私。よくも騙したなお父さん。
みつおが生まれた日…地上に舞い降りた天使。
みつおが初めて「お母さん」と呼んだ日…涙が流れた。

今日はゆかり箱を開ける日。
「開けてください」
そういわれて、私はその箱を開いた。　　
目に飛び込んくる品々……突然私はハッと気がついた。
「これもしかして……」
「そうです。咲江さんの今までのお落とし物が、全てここに集められています」
小さい時、外でなくして大泣きしたぬいぐるみ。お財布、イヤリング、中には折り畳み傘のケースまであった。

みんなありがとう。品々にお礼をいって、私は箱を閉じた。