ロード・オブ・ザ・ユカリング

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彼女が眉間にシワを寄せてそれを見ていると、隣席のおじさんが呟いた。
「ユカリング」
「イカ、ユカ……?」
彼女はオタオタしながら、箸の先に掴んだ捻れたイカリングフライと中年男の顔を見比べた。そのイカリングは数字の8の字型、もしくは無限記号(∞)の形を作っていた。
「運命だ」
おじさんは厳かに言った。
揺れる列車。おじさんと少女。弁当と箸。イカリングとユカリング。
「ユカリングに導かれしもの、八つの世界の縁を繋ぎ、人々の上に無限の光をもたらさん」
彼女はおじさんの顔をじっと見た。
そのとき、カーブに差し掛かった列車が大きく揺らいだ。
「あっ」
ユカリングは箸の先から落ちて転がり、車両を渡ってきた犬が、それをぱくりと食べた。
「ああっ!」
犬を連れていたのは、ふくよかな体型をした風格漂うマダム。
「あら、ごめんあそばせ」
三人と一匹は顔を見合わせる。

いま、新たな冒険が始まろうとしていた。
ファンタジー
公開:20/10/25 07:00
更新:20/10/24 09:05
コンテスト

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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