初恋の人

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初恋は小学校の登下校の道に貼ってあるポスターのお姉さんだった。中学校にあがって通学路が変わるまで、俺はお姉さんに恋をしていた。

大人になった俺は帰省中、二十年ぶりにあの道でポスターの記憶が弾けるように蘇った。右上の糊が剥がれていたが、まだ貼ってある嬉しさに駆け寄って捲る。
息が詰まった。
ポスターのお姉さんは大人の女性に変わっていた。人が変わったんじゃない。同じ女性が年を重ねている。
気味の悪さに手を離すと足早にその場を後にした。

再び二十年の歳月が過ぎた頃、俺はあの道を歩いていた。
蓋をしていた不気味な記憶が燻り、ポスターのあった場所を見る。と、安堵の溜息が漏れた。ポスターは上四分の三程が破れてなくなっていたのだ。
思わず笑みが溢れる。なんて事ない。ただのポスターじゃないか。が、次の瞬間俺は走り出していた。
通り過ぎる時、見えてしまった。残りの四分の一に写ったシワだらけの手が。
ホラー
公開:20/10/23 23:37

森川 雨

ショートショートには不向きな書き方かもしれませんが、こちらで修行させていただきたくお邪魔しました。

よろしくお願いします。

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