飴もみ

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このままでは熱すぎる。
六尺もの板で右へ左へと傾ける。
すると温度が下がり、ちょうどよくなる。
この工程は必須だ。

しかしこれはかなりの体力がいる。
自分達が冷ましている液体は、温度が下がるほど粘度があがる。
時間が過ぎれば過ぎるほど力が必要になるのだ。

ここに混ぜ込む仕上げ。
あの子の恋心でピンクの苺味。
青春の瞬きは黄色のレモン。
全力で走った後のソーダ風。
メロンだブドウだコーヒーだ。
更に煮詰めてべっこうだ。

ここは源泉80度の水飴屋。
毎日スタッフ総出で飴もみをしている。
紙芝居乗せた自転車が店前に止まっている。
たまに飴買い幽霊やら口裂け女も来る。
住所は教えられないが、温泉地の一角にあることだけ伝えておこう。
壁いっぱいに水飴や飴菓子が飾ってある、白い屋根の木造の家。
小さな看板に『毎日汲んでる源泉飴』と書いてあるから、すぐわかると思う。
ファンタジー
公開:20/10/23 23:13

雨森れに( 東京 )

色合いの綺麗な物語を紡ぎたい。
シーンごと切り取られた刹那。
不思議、恋愛、ファンタジー、怪談、純猥談などをチラホラと。
中身はお酒が好きなアグレッシブ。

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Radiotalk: https://radiotalk.jp/program/61359

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