平和主義者の教典

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  平和主義者の教典

 戦争で満ちた世界に平和主義者がいた。彼には親から譲られた神の教典があった。戦争には大反対だったが、徴兵の通知が届くと、貧しかったので参加せざるを得なかった。戦場で弾が平和主義者の胸に当たったが、幸いなことに胸ポケットの教典が盾になったおかげで一命を取り留めた。
 神の加護だ。平和主義者は故郷で教典が命を救ってくれたと話した。人々は感動し、この話を別の者に伝えた。話は町から国中に広まり、皆の信仰心を煽った。争いの世に救いを得ようと、人々は同じ教典を読みふけり、神の教えを世界に広めようとし、反対の声は力で黙らせた。暴動に繋がりかけた信徒に国際機関が警告を出した時、狂信者になった国王は反抗して武装する事を選んだ。
 そして平和主義者が彼の子に教典を譲った日、新たな戦争が始まった。戦争には大反対だったが、徴兵の通知が届くと、貧しかったので参加せざるを得なかった。
その他
公開:20/10/23 21:28
更新:20/10/23 21:29

echelon

昔の海外文学が好きです。

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