思い出の雨

3
4

ビニール傘が好きだ。
視界がクリアだし、何より雨粒が綺麗だ。


新聞部で居残りすることになった。
そこは成長期の学生達。
小腹が減っては記事が書けん!と満場一致し、くじ引きで買い出し組が決まった。
私と、先輩だ。
外はそれなりの雨で行くのが億劫になる。
でも先輩は仕方ないなぁと傘を取った。
私もそれに続く。

『こんな天気の日に買い出しになっちゃうなんてツイてないですよね』
『そうだねぇ。でも俺は雨はそこまで嫌じゃないかな。なんか綺麗じゃん』
『綺麗ですか?』
『うん、雨粒とかキラキラしていてさ。こんな事言ってたらポエマーみたいかな』
元々ポエマーみたいなとこありましたよ。というのは飲み込んだ。
『私も今日は悪くないかなって思えます』
自分の傘を折りたたんで、先輩のビニール傘に入った。


『好きです』


私はビニール傘派だ。
視界や景色も好ましいが、妻との馴れ初めを思い出すからだ。
恋愛
公開:20/10/23 20:01

雨森れに( 東京 )

色合いの綺麗な物語を紡ぎたい。
シーンごと切り取られた刹那。
不思議、恋愛、ファンタジー、怪談、純猥談などをチラホラと。
中身はお酒が好きなアグレッシブ。

Twitter: https://twitter.com/rainy02forest
note: https://note.com/tettio02
Radiotalk: https://radiotalk.jp/program/61359

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容