ドレス

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 お父様はお仕事でいつも忙しいけれど、私の為にドレスを買ってきてくれる。洗い替えもだけど、見た目の為にも沢山のドレスが必要だろうと。
 最高の手触りのドレスを私に着せるのはお母様の役目だ。そして、脱がせてくれるのも。脱がせたドレスはいつもお母様が丁寧に揉み洗いして、しっかりと乾燥させて私専用のクローゼットへ。
 あなたは何もしなくていいのよってお母様は言ってくれる。微笑みながら、頭を撫でてくれる。
 幸せ。私はこんなに幸せ。でもわかっている。私は愛する両親ともうすぐ、二度と会えなくなるのだということ。
 体の調整はとてもうまくいっている。滑らかで強靭なこのボディはお父様が、私が簡単に破壊されない様に注文した。私のボディに着せられているのは、人工皮膚で出来た『皮膚ドレス』だ。顔の造形も、肌の色も変えて、どんな見た目にでもなれる。
 私はいずれ、姿を変えながら闇の世界で生きる、スパイになる。
その他
公開:20/10/22 20:42
更新:20/10/23 08:29

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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