釘乙女。

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それはただ近道の為に入った路地裏だった。
普段は通らないのだが、今日は早く帰って久々に放送される心霊番組を観る為の準備をしなくてはならなかった。
違和感はその路地裏に足を踏み入れた瞬間から僕に存在を主張してきた。
男が右側の壁に張り付けにされていた。両手を広げ、両掌の中央には大きな釘が突き刺さっていた。
「……あれは……怪物だ……」
僕がこれから行く先を見ながら、男はガタガタと震えていた。
少し歩くと、また別の男が釘で張り付けにされていた。
「助けてよぉ……あいつの牙がぁ……痛いよぉ……」
僕の足は止まらなかった。更に奥へ行くと、再び、張り付け男。
気が付いたことがある。被害者は全員、二重の男。そして、頭にはコンドームを被っている。
3人目の男は先程からずっと不気味に笑っていた。
「はははっ、『釘乙女』ちゃーん」
……「釘乙女」?
もっと奥。暗闇から男の絶叫が響いた。
ホラー
公開:20/10/22 20:30
更新:20/10/22 20:34

夜文学。( 夜の街。 )

朝が来なくなった街、「夜の街」。
そこで生きる、歪な彼等の日常。

Twitterでも「夜の街」の140字小説を書いてます、是非。→ @UhKmBUQ168TjY5a

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