記憶スイッチ

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「今出て行った男の人、常連さん?」
喫茶店のウェイトレスに帽子を目深にかぶった猫背気味の男の事を聞く。
「刑事の勘?ここ一週間くらい毎日来てるよ」
顔馴染みのマスターが興味津々と口を挟んだ。
「日雇いかもしれんな」
ウェイトレスが何かを言いたそうなので問うと嬉しそうにちらしを持ってきた。
「三軒隣の美容室で、店長がする頭皮マッサージ、忘れた記憶が甦るってひっそりブームなんですよ」
「ひっそり、ブーム」

店長の頭皮マッサージを受ける羽目になった。確かに、絶妙に良い刺激を感じた。小麦粉を買ってくるように頼まれていたのを思い出す。
「ののかちゃん、注意しなきゃな」
恐縮する店長を制止する。
「金庫破りのマサだ!」
「えっ、その頭でどこに行くんです」

後日、喫茶店に現れたマサを取り押さえる事が出来た。まだ忘れている事があった気がして、お礼がてら頭皮マッサージを受ける。
「あ、小麦粉だ!」
ミステリー・推理
公開:20/10/22 14:48
更新:20/10/22 16:44
頭皮マッサージ 小麦粉買いました

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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