自分さがし

あんことホイップクリームを最初に結びつけたのは俺だ、とか、ポテチでポテサラ作ってやるよ、などと、居酒屋のカウンターでずっと話しかけてくる男が、実は神様だという。
「俺いくつに見える」
知らねえよ。どーでもいいよ。とは思ったけれど、本当に神様かもしれないから私は仕方なく、
「うーん。２５」
と答えた。
「俺さ、タッキーに似てるって言われんのよ」
「タッキーって？」
「滝川一益」
誰。知らねえよ。それボケてんの？マジ？どっち。とは思ったけれど、本当に神様かもしれないから私は仕方なく、
「右の眉がね」
と答えた。
聞けば滝川一益は織田信長の家臣だという。こんな会話神様にしかできないかも、と頭をよぎったところでキスをされた。
何かがはじまったと思った。
そのあと私は神様とすごいことをした。
何かがおわったと思った。
ひとり海岸に残されて、私は豊洲に出荷されたの。鮮魚なのか、青果なのかもわからずに。