ゆかりドラフト
8
2
「たしかに生まれたよ。でも、香らないんだよな」
詩人は苦しげに呟いた。いや正確に言えば、我々の質問にイタコが答えた。
夭折した天才…。今年のドラフト会議で、わが街はその詩人を指名した。ほかの土地や物との競合はなく、すんなりと交渉権を手中に。しかし詩人はゆかりの公認に難色を示した。冒頭はその理由である。
予想外だった。政令指定都市でもあるし、文化事業に割く予算だってある。その我々からのオファーを無下にしようとは。
しかも詩人はまだ無名なのだ。ブレイク寸前のシンガーソングライターが、じつは詩人の作品を愛読しているとの情報をキャッチした上での、いわば青田買いだった。
「もっと辺鄙な片田舎がいいなあ。その方がロマ、ンが、あ…」
イタコの息づかいが荒くなり、しまいにはのけぞって絶叫し始めた。「うあー、ろうにんー、ろうにーん!」
くそっ。この8位指名を蹴ったら、もう来年はあると思うな。
詩人は苦しげに呟いた。いや正確に言えば、我々の質問にイタコが答えた。
夭折した天才…。今年のドラフト会議で、わが街はその詩人を指名した。ほかの土地や物との競合はなく、すんなりと交渉権を手中に。しかし詩人はゆかりの公認に難色を示した。冒頭はその理由である。
予想外だった。政令指定都市でもあるし、文化事業に割く予算だってある。その我々からのオファーを無下にしようとは。
しかも詩人はまだ無名なのだ。ブレイク寸前のシンガーソングライターが、じつは詩人の作品を愛読しているとの情報をキャッチした上での、いわば青田買いだった。
「もっと辺鄙な片田舎がいいなあ。その方がロマ、ンが、あ…」
イタコの息づかいが荒くなり、しまいにはのけぞって絶叫し始めた。「うあー、ろうにんー、ろうにーん!」
くそっ。この8位指名を蹴ったら、もう来年はあると思うな。
ファンタジー
公開:20/10/20 23:18
400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。
ログインするとコメントを投稿できます