A国の実情

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 昨今、無人電気自動車が続々広まりつつある。しかし、発展途上国のA国の移動手段は、手押し車が主流。
「見てください、手押し車です。まさか現存するとは」
 テレビアナウンサーが、手押し車を指さし、派手なリアクションで解説している。
 手押し車を引く老人は、興味なさげに、通り過ぎていく。
「支援を! この国に支援を!」
 けたたましく叫びたてるアナウンサー。
 対し、A国の住民は我関せず。
「テレビの価値すらわからぬこの国に支援を!」

 老人は手押し車を倉庫にしまい、帰宅した。
「電気!」
 部屋に設置されたセンサーが、部屋の照明を調整。老人は満足げに頷くと、ふかふかのソファーに腰かける。
「テレビ!」
 壁付けのモニターに、人気番組『悲惨! A国の実情!』が映し出された。
 老人は下品に笑うと、支援金で買ったワインを口に含む。
「国全体で貧乏なフリをするなどと、よく思いついたものだ」
SF
公開:20/10/20 21:36
更新:20/10/21 05:43

ゆぅる( 東京 )

お立ち寄りありがとうございます。ショートショート初心者です。
拙いなりに文章の面白さを追求していきたいと思って日々研究しています。
よろしくお願いします!

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