天使の大願"過"成就

　恋人との愛を深めるべく、女は天使に祈りを捧げた。
「お願いします…天使様…」
　現れた天使は微笑みながら「慈善事業、喜んでっ！」と万歳した。
「カレにもっと愛されたいの…」
　天使は腕組みをし、「楽勝ね」と頷いた。
「次にカレと会った時、あなたへの愛情を100倍にしてあげる」
　女は歓喜し、恋人の家へと走った。
　そして、戸惑う恋人に対面した瞬間――
「へっ？」
　女は恋人に腹を刺され、血と内臓を玄関にぶち撒けた。
　
「なっ…なんっ…で…」
　驚愕し倒れる女の背後で、天使は困惑した。
「…愛情だけを特化すると、理性と倫理が壊れちゃう？　よくわからないけど…まぁ、いっかっ！」
「たす……け、て」
　死にゆく女に向けて、恋人は薄ら笑った。
「…愛している。冷凍して、僕が永遠に愛でてあげる」


「イイことをすると気持ちいいね。じゃあ、お幸せにっ！」
　天使は翼を羽ばたかせて飛び去った……。