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私の顔に楽しそうに落書きした男の子。
自分の家の牛にも落書きしたとかで怒られていた。
濃い黒と墨汁の薄い黒の斑を背負った牛は何だか可愛かった。

それから、彼は一生懸命勉強をしてカウ柄を染め付ける仕事に就いた。

対して私はカウ柄に魅力されてしまって、小物も家具も牛柄カウ柄白黒だ。
落書きされたあの日から、忘れたくても忘れられない。
高揚感と一緒に描かれた墨汁の匂いを思い出す。
あの真剣な眼差しが、どうしても忘れられない。
もう私の事なんて忘れてしまっただろうか。


『あの日、顔に斑を入れられた者です。
お久しぶりです。
いかがお過ごしでしょうか。
また顔に落書きしてくれませんか。』


それだけ書いて電話番号を添えた手紙。
変なやつだと思われたら、それはそれでいい。連絡なんか来ないだろう。
数日後、電話が来るまではそう思っていた。
明日、私達は季節外れの羽子板をする。
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公開:20/10/19 01:02

雨森れに( 東京 )

色合いの綺麗な物語を紡ぎたい。
シーンごと切り取られた刹那。
不思議、恋愛、ファンタジー、怪談、純猥談などをチラホラと。
中身はお酒が好きなアグレッシブ。

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