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「コンロギ捕まえに行くぞ」
その日、縁側で柿を食べていると、庭にいた兄が声をかけてきた。手には鉄のバケツをぶら下げていて、中には二本の薩摩芋が入っていた。
「コオロギ?裏山にかい?」
「ああ、コンロギだ」

「ここにもいた。でも段々こいつらの数も減ってきたな」
叢や穴ぼこ、そして石の裏を探し続けた兄の手は、すっかり泥だらけになっていた。
「いろんな所にいるね、コオロギ」
「コンロギだ。こうやって一箇所に集めると熱を出す。だから散らばってんだ、山火事になるからな。昔はこうして焜炉の代わりにもした。それでコンロギってんだ。そろそろかな…」
それから僕は薩摩芋に枝を刺すと、真っ赤になったバケツの中に入れた。

暫くして僕はひとりで裏山へコンロギを探しにいき、見つけた数匹を土の上に集めた。でも、それは前に見た時と違っていた。
「そうか…もう冬か…」
木枯らしが吹き、その青く小さい灯が消えていった。
ファンタジー
公開:20/10/18 19:50
更新:20/10/18 21:29

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