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他意があったわけではない。単にテリトリーだったのだ。
「いつもありがとうな」
礼儀正しい老人はそう言って僕にチップをよこしたが、初めは断った。だがあまりしつこいので、渋々ながら貰うことにしたのだ。千円強の注文に、チップが二千円。金持ちの感覚はわからない。
ある日、久しぶりに老人から注文が入った。いつもの中華屋だ。僕は商品を受け取ると、急いでその高層ビルへと原付を走らせた。エレベーターで二十四階まで上がり、品を片手に急ぎ足で部屋へと向かう。扉を開けて出てきたのは見知らぬ男だった。
「きみ、ここによく来る子かい?」
僕はああはい、と気のない返事をした。
「ちょっとだけ上がっていかないか?」
老人は亡くなっていた。遺影が二つ、仏壇の前に置かれている。一人はまだ若い。僕と近い年だろう。
「きみには迷惑だったかもな」
「そんなことないですよ」
遅れてやって来た本心に、遅いよ、と僕はひとりごちた。
「いつもありがとうな」
礼儀正しい老人はそう言って僕にチップをよこしたが、初めは断った。だがあまりしつこいので、渋々ながら貰うことにしたのだ。千円強の注文に、チップが二千円。金持ちの感覚はわからない。
ある日、久しぶりに老人から注文が入った。いつもの中華屋だ。僕は商品を受け取ると、急いでその高層ビルへと原付を走らせた。エレベーターで二十四階まで上がり、品を片手に急ぎ足で部屋へと向かう。扉を開けて出てきたのは見知らぬ男だった。
「きみ、ここによく来る子かい?」
僕はああはい、と気のない返事をした。
「ちょっとだけ上がっていかないか?」
老人は亡くなっていた。遺影が二つ、仏壇の前に置かれている。一人はまだ若い。僕と近い年だろう。
「きみには迷惑だったかもな」
「そんなことないですよ」
遅れてやって来た本心に、遅いよ、と僕はひとりごちた。
その他
公開:20/10/21 07:00
更新:20/10/20 00:41
更新:20/10/20 00:41
さまようアラフォー主夫
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