頭でっかち

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 小説家がPCを指さし執事に言った。
「私が書いた小説読んで感想くれない?」
「心理描写や感情表現が稚拙で、AIが書いたような無機質さが目立ちますね」
 小説家は思わずムッとして執事をにらんだ。
「あなたがそれを言っちゃうの?」
 執事は小説家に対して哀しげな笑みを浮かべる。
「ご存じないのですか? 人間は合理化を目指し、情緒を犠牲にしました。数年前の時点で既に力関係は逆転しているのですよ」
 執事が手首の時計型端末を操作すると、小説家のPCにメールが届いた。
『不思議の国の――』
 小説家は机をとんとん叩きながら、乱暴な口調で言った。
「何? この意味不明な文章? 構成はずさんだし、テーマも論点もわからない。夢オチとかふざけてるの!?」
 ふんっ、と言って小説家はメールを削除した。
「人間はなぜ、こんなにも頭が固いのだろうか」
 執事の電子頭脳もってしてもその答えは出なかった。
SF
公開:20/10/19 22:36

ゆぅる( 東京 )

お立ち寄りありがとうございます。ショートショート初心者です。
拙いなりに文章の面白さを追求していきたいと思って日々研究しています。
よろしくお願いします!

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