金木犀

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金木犀がほのかに香る 帰り道

住宅地をくねくねと 自転車を漕いで帰る

曲がり角 ふっと視界を抜けてゆくものがあった

追って角を曲がると 体が黒く 左の後ろ足だけが真っ白の猫がゆうゆうと歩いていた

その様子を 縁側で日向ぼっこをしていたおばあさんが眺めている

写真館の前を通り 日本家屋の並ぶ小道に出た

玄関から顔をのぞかせているおじいさんがいた

その視線の先では 孫らしき幼い少女が ヘルメットをかぶって自転車の練習をしていた

相変わらず金木犀の甘い匂いがしていた

夕方 忘れ物を思い出して また 金木犀の香る道を漕いでゆく

あまい金木犀の香りが なんだか妙にむつこく感じた

一つ目の角を曲がった時 その違和感の正体を知った

規制線の貼られた先に 住宅に白いトラックがつっこんでいるのを見た

ガスの匂いと焼けたタイヤの匂いに混じる 甘ったるい金木犀の匂いに 思わず噎せた
その他
公開:20/10/17 22:06

かさ( 愛媛 )

来年以降のいきかたが決まりましたヽ(=´▽`=)ノ

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