誤縁性肺炎

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医者は耳から聴診器を外して私に告げた。
「誤縁性肺炎ですね」
「誤縁性?」
「恋をすると胸がドキドキするでしょ?その反対に、悪縁の場合は呼吸器が炎症を起こすんです」

なるほどと納得したのは、お察しの通りの心当たりがあるからだ。先日仕事終わりに引っ掛けたバーで会った女に一目ぼれしたのだ。残業を言い訳に何度か通っていると、次第に妻と会話すれば咳が出て、手料理を食べれば忽ちむせてしまうようになった。恋は心の病ならず、身体の病と言うことか。全く、ありがたいんだか、お節介なんだか。

診察の翌々晩。
意を決した俺は、彼女の連絡先をあらゆる履歴から削除した。だが1、2週間しても症状に改善が見られなかった。文句を言うため、再び医者を訪れた。

「このヤブ医者っ。私は心当たりの女と縁を切ったのに全然治らな…」
「つい先日原因が判明しましたよ。実はあなたの奥様がこちらに来られましてね」
SF
公開:20/10/18 18:00
更新:20/12/18 09:45
ゆかり 誤嚥 誤縁

まのじゅん( 神戸 )

まのじゅん/間野 純
神戸市在住の26歳
執筆は2020年春ごろから

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