縁者捜しの老人

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江戸時代、老人が何処かに自分の縁者が居ないものかと、先づ西国へ行くことにした。朝早く路銀と手形は腹巻きに納め、旅姿で日本橋まで来ると、知り合いの商家の主が仲間と今からお伊勢参りに行くと言う。老人が事情を話すと一人旅では危ないから途中まで一緒に行こうと誘ってくれた。

箱根の関所も無事通過して、津に着いたので一行と別れて、老人は一人で山超えをする事になった。
途中で真っ暗になり焦っている時に、突然山賊が現れ襲ってきた。もうだめだと観念した時、熊が出て来て山賊を蹴散らし助けてくれた。
熊に厚くお礼を言うと、今夜は遅いから我が洞穴に泊まれと言ってくれた。
色々話をしてみるとこの熊は名を熊文と言い、出身地は肥の国であると。

老人は思い出した、先祖が肥の国で農業をしていた時、傷ついた熊を助けたことがあると言う事を。熊文がその子孫であり、今日奇しくも恩返しをしてくれた不思議な縁者だと分かった。
ファンタジー
公開:20/10/17 19:51
更新:20/10/17 20:13

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