夜の水ー逃走

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「行方不明だった父親の愛人だという研究員、遺体で発見されたそうだ」
「原田美花の精神状態が心配ですね。慕っていたそうですから」
二人は美花の元に車を走らせた。具合が悪いからと学校を早退したらしい。
「嫌な予感がするな」
「急ぎましょう」

美花は自分の理解者だと思っていた女がこの世を去った事で情緒不安定になっていた。
「美花、お前は少し病院に入院しろ。今タクシーを呼ぶ」
父は美花の顔を少しも見ずに、自分の病院へ入院手続きを始めた。携帯電話で話す父の後ろ姿が徐々に水に消えていく。
「全部お父さんが悪いんじゃない」

「先輩、あれ!」
玄関ポーチにうずくまっている美花に、ゆっくり近づいていく。
「大丈夫ですか」
ゆっくりあげた顔は異常に白く、瞳の紅さが際立っていた。美花は言葉にならない咆哮をあげ、持っていた液体を二人に浴びせた。
「うっ」
歪んだ景色に美花は裸足で駆けていく。
ホラー
公開:20/10/17 19:31
夜の水ー逃走 次回最終回

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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