セミプロの嘆き　〜箸休め〜

セミの仲間でも特に美しい音色を奏でるセミがいた。彼こそはプロだと仲間の誰もが認め、セミプロと呼ばれた。
しかし彼は不満だった。
セミプロではプロではない。半アマチュアだ。自分はプロ級だとの自負があった。

そこへプロのガチャガチャ合奏団から誘いがあった。スズムシへの変身特典付きだ。
『君の才能は素晴らしい。セミのままではもったいない。是非スズムシとして我々と一緒に活躍してほしい』
彼は躊躇なく了承した。

そして翌日セミとして最後の演奏をしている最中、突然力を失い樹から落ちた。
そしてそのまま死んでしまった。

ガチャガチャ合奏団のマネージャーは惜しんだ。
もう1日早ければ間に合ったのに。
こうして才能あるセミは永遠に失われた。

うるさい夏も過ぎようとしている頃のことだった。合掌。