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週に数回デイケアに通っている義母は、施設にも人間関係にも幾分馴染めないようで、「今日はどうでした?」と聞いても「いつもと同じだよ」と愛想のない返事をひとつするだけだった。
そんなある日「明日はとても楽しみだ」と夕飯時にニコニコとしているので「明日の遠足、景色が綺麗なところに連れてってもらえるみたいで良かったですね」と言うと「あぁ景色を観ながら沢山話してくるよ」と答えた。やっと話の合う人が現れたのだろう。私は安堵した。
「私は仕事でご一緒出来ませんが、気をつけて行ってきて下さいね」
翌日迎えのバスに乗り込む時、義母は珍しくこちらに向かって一礼をした。
電話に一報が入ったのは午後のことだった。『おばあ様は帰りのバスの中で眠るように旅立たれました。手にはおじい様の写真を握られて…』
後日判明したのだが、行き先は義父母の新婚旅行先と同じだった。

しおりには義母の字で「縁足」と書き直してあった。
その他
公開:20/10/18 16:45
更新:20/10/18 20:06

ことのは もも。( 日本 関東 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
短い物語が好きです。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します。

こちらでは2018年5月から書き始めて、2020年11月の時点で300作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツと書いていきたいと思います(*^^*)

2019年 プチコン新生活優秀賞受賞
2020年 DJ MARUKOME読めるカレー大賞特別賞受賞
2021年 ベルモニー縁コンテスト 入選

 

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