嗤う女
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子供の頃に口裂け女を見て以来、二つに割れるものが怖くなった。神社でドングリを拾っている時に、嗤うアケビを見て腰を抜かした。ケラケラと嗤うその中に一つ、二つと今にも割れてあの時の事を喋り出しそうだった。友人達が面白がって、アケビを持って追っかけてきたり、机の中に隠したり散々な目に遭った。
社会人になってあれは悪夢の一つだと忘れかけていた。駅の化粧室で隣の女性がコンパクトに映った顔をじっと見ている。はみ出した口紅を綺麗に整えていた。
あの時の口裂け女が私に向かって何を言ったかぼんやりと思い出す。
『誰にも話してないだろうな』
コンパクトのミラーに映る紅い口が言った。思わず腰を抜かしそうになり、シンクにしがみつく。
あの時、裂けた様に見えた口は乱れた口紅だったのか、それとも爪が食い込むほど掴んだ男の胸から流れる血だったのか。
「誰にもしゃべってない」
隣の女性は不審げに出ていった。
社会人になってあれは悪夢の一つだと忘れかけていた。駅の化粧室で隣の女性がコンパクトに映った顔をじっと見ている。はみ出した口紅を綺麗に整えていた。
あの時の口裂け女が私に向かって何を言ったかぼんやりと思い出す。
『誰にも話してないだろうな』
コンパクトのミラーに映る紅い口が言った。思わず腰を抜かしそうになり、シンクにしがみつく。
あの時、裂けた様に見えた口は乱れた口紅だったのか、それとも爪が食い込むほど掴んだ男の胸から流れる血だったのか。
「誰にもしゃべってない」
隣の女性は不審げに出ていった。
ホラー
公開:20/10/18 12:29
都市伝説
口裂け女
アケビ
射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。
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