ガラスの靴

　深夜０時を過ぎ、シンデレラの魔法は解けてしまった。シンデレラは魔法使いの老婆に感謝の言葉を伝えていた。
「私はあなたと出会えて、本当に幸運ね。世の中には私よりももっと大変な思いをしている人だっていると思うのに、私はあなたに巡り会って、こんな素敵な夜を過ごせて…」
　老婆はその言葉を聞いただけでも心が満たされていた。できることならば、全ての人に幸福をもたらしたい。しかし、どんなに魔法を使えようとそれは無理な話で、このシンデレラのようにささやかな夢を叶えるだけでも精一杯だった。
　ふと、老婆はシンデレラの足元に気づいた。
「おや？ガラスの靴を落としたのかい？」
　シンデレラは謝罪した。そして、こう続けた。
「あなたとの縁を無駄にしたくなかったの。こうして、せっかく頂いたチャンスですもの。手がかりが無ければ、王子様は魔法が解けてしまった私を見つけることはできないでしょ？」