舞踏会のその後

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「このご縁に、感謝しかありません。」
 舞い上がっている王子に頭を抱えているのは彼の父親でもある王様だった。相手はシンデレラという小汚い小娘だ。家柄も王子と釣り合うものではない。しかも、魔法使いの老婆の気まぐれが一役買っているという話ではないか。王様は何時間と説得を試みたが、王子は頑なだった。
「父上、愛とは心です。見た目も身分も関係ない。私はひと時ですが彼女と一緒に過ごし、恋をしたのです。彼女がどんな方法であれ、あの舞踏会に参加し、私と出会い、そして偶然残されたガラスの靴。全てが運命。結婚相手は彼女以外考えられません。」
 
 かくして結婚式は行われた。花嫁は美しいドレスに身を包んでいるものの、だらしなく太り、歯は黒く、口も曲がっていた。舞踏会の日にかけた魔法はかなり強力だったようだ。「愛は心」と豪語した手前、王子はばつが悪い顔をしていた。
ファンタジー
公開:20/10/18 10:22
更新:20/10/18 10:37

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