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私はカウ柄屋だ。
滅多にいない職業だが、依頼は〇年待ちなほど殺到している。

この職業に目覚めたのは、ある正月に羽子板で遊んでいた時だ。
負けた女の子の顔に墨汁で落書きをした。
右目を大きくぐるっと囲んで、塗り潰した。
わけもわからないぐらいの興奮を覚えた。
その夜に家の牛舎に忍び込み、墨汁でブチの足りない牛に書き足してやった。

翌朝、もちろん大目玉を食らった。
しかしその日のうちにブチを足された牛は高値で買われていった。

それから私は笑われようと馬鹿にされようと、墨を改良し続けた。
少しの可能性にかけてみた。

案の定。

私がブチを足す牛は高値で売れる。
革が必要でない場合でも、ひどいぐらいに高価だった。
『カウ柄屋』これを生業とし、家業を弟に譲った。

あの日落書きした女の子から手紙が来た。
なんだろうか。
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公開:20/10/18 00:00

雨森れに( 東京 )

色合いの綺麗な物語を紡ぎたい。
シーンごと切り取られた刹那。
不思議、恋愛、ファンタジー、怪談、純猥談などをチラホラと。
中身はお酒が好きなアグレッシブ。

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