空筆

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 灰色だ。空も、家も学校も、何もかも。
 同級生が素直にうらやましい。俺も普通の感性に生まれたかった。
 先生は「とりあえず大学」って言っているけど、全く勉強する気になれない。
「得意教科、国語と美術……。生きていくのに何の役に立つんだか」
 つらい。もうだめだ。
 俺は寂れた公園のベンチに座り込み、ため息をついた。
 ぼーっとしていると、妙な男がやってきた。スーツ姿だったが、使い古されたパレットと筆を持っているのだ。
 男は筆を大きく振りかぶると、灰色の空へ向けて振るった。すると、筆の軌跡が鮮やかな紅に染まった。
「これ、君に上げるよ」
 言葉を残して、男は霧のように消えてしまった。筆だけは消えず、地面に落ちて転がった。
 俺は筆を拾い、何度もスイング。景色はみるみる色彩を取り戻し、鮮烈な夕焼けが視界を覆った。
「芸術も人の役に立つんだな……」
 筆は夕日を浴び、誇らしげに輝いていた。
ファンタジー
公開:20/10/17 22:40

ゆぅる( 東京 )

お立ち寄りありがとうございます。ショートショート初心者です。
拙いなりに文章の面白さを追求していきたいと思って日々研究しています。
よろしくお願いします!

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