夜の水ー捜査編1/3

「先輩、ダメですって。作業を邪魔すると怒られますよ」
「分かってるよ」
ワンルームマンションの一室で男女の遺体が見つかった。発見者は天井から水が漏れてきたとクレームを入れた下の階の住人と大家だった。行ってみたら鍵は開いており、大家が声をかけながら中に入ろうとしたら床が水浸しだった。慌てて水回りを確認しながら風呂場へ行き、二人の遺体を発見した。蘇生を試みるまでもなく、見開いた目は死を確信出来るものだった。

遺体が運び出されたが鑑識の作業は続いている。
「この部屋の持ち主は、遺体で見つかった古沢勇治、二十八才、会社員。一緒に見つかったのは町田皐月、十八才、清琳高校三年です。二人の関係を調べている所です」
「死因は？」
「二人とも大量の水を飲んでの溺死です」
「風呂でか？」
「風呂の蛇口が開けっ放しで、遺体も濡れていたみたいです」
近くで停車していた黒い車が発進して行った。