樹海

富士の樹海の奥深くに足を進める。こんな所に来る目的は一つ。自殺だ。
生きる事が嫌になった私は誰にも見つからない場所でひっそりと死を迎える為、歩き続ける。
木々によって遮られる光。背の高い草に溺れる私は藻掻く様に手足をばたつかせる。
そうして樹海を進んだ先にそれはあった。
海だ…森の中に海があった。
空を泳ぐ魚達は首つり死体の肉をついばむ。あれは鮗か？いや、ここに生息している以上、魚柊と言ったところか…
魚椆や魚枰が舞い踊るここはまるで竜宮城のように思えた。
足元を見れば白骨死体に生える柵楜樵。
何とも美しい…この海の一部になれるのなら喜んで身を捧げよう…
私を歓迎するように木海月が近づいてくる。触腕を私の全身に絡ませる。
足元を見ると私の下半身を富士壺ががっちりと固めている。ちょっと待て！まさか？
海月が腕を恐ろしい力で引く。ぶちり…千切れた腕に魚が集まる。
それすら美しいと思わず笑った。