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二階の窓から爽やかな若葉が目に痛い。畳の匂いも新鮮な和室で私は座卓に向かう。卓上には真っ白な便箋。
数日前に彼女から手紙が届いた。びっくりした。二十年以上も会わず音信もなかった彼女からいきなりの手紙。
もうすっかり忘れていた。別れた経緯はよく覚えていない。若かった。お互いに自然に遠ざかったのだ。
手紙には、偶然に私の住所を知って便りを書いた、できたらまた会いたい、とあった。
私は困った。嫌ではないが躊躇する。今さら会って何を話すのか。しかしこの機会に会わなければ今後二度と会うことはないだろう。二度と。
私は返事を書くことにした。手紙を書くのは何年ぶりだろう。落ち着いた雰囲気が必要だ。都会の和風旅館の一室を借りた。高級万年筆と上質の便箋を買い求めて、座卓に向かう。
何と書くべきか。一行目が浮かばない。二行目も。その次も。便箋のずっと下の方に万年筆でしたためた。
 …空白ってとても素敵ですね。
その他
公開:20/10/16 18:00

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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