30
14
「君ならうまく使ってくれるだろう」
青年が恩師から贈られた聴診器は、心音と共に体の声が聞けるという不思議なものだった。
―胃が危ない
―腎臓が問題だ
やがて名医と評判になった青年は、次第にその地位と名声に溺れるようになっていった。
ある日のこと、青年はふと自分の胸に聴診器を当ててみた。
―貧乏人は来るな
―診てほしきゃ金包め
―俺を誰だと…
「やめろおおおお…っ!」
青年は聴診器を引き毟ると床に叩きつけた。勢いで体が書棚にあたり、一冊の本が鈍い音を立てて床に落ちる。
それは元々恩師のものだった。学生時代、満点ならその本をくれと青年が賭けを挑んだのだ。勝負に負けた恩師は「畜生、買い直しか」と笑った…
青年は這って聴診器を拾い、わななく手で本に当てた。
―大丈夫
―まだ間に合う
―君ならきっと…
「先生…!」
青年は肩を震わせながら、静かな恩師の声にいつまでも耳を澄ませ続けていた。
青年が恩師から贈られた聴診器は、心音と共に体の声が聞けるという不思議なものだった。
―胃が危ない
―腎臓が問題だ
やがて名医と評判になった青年は、次第にその地位と名声に溺れるようになっていった。
ある日のこと、青年はふと自分の胸に聴診器を当ててみた。
―貧乏人は来るな
―診てほしきゃ金包め
―俺を誰だと…
「やめろおおおお…っ!」
青年は聴診器を引き毟ると床に叩きつけた。勢いで体が書棚にあたり、一冊の本が鈍い音を立てて床に落ちる。
それは元々恩師のものだった。学生時代、満点ならその本をくれと青年が賭けを挑んだのだ。勝負に負けた恩師は「畜生、買い直しか」と笑った…
青年は這って聴診器を拾い、わななく手で本に当てた。
―大丈夫
―まだ間に合う
―君ならきっと…
「先生…!」
青年は肩を震わせながら、静かな恩師の声にいつまでも耳を澄ませ続けていた。
その他
公開:20/10/17 16:33
更新:21/08/26 11:48
更新:21/08/26 11:48
縁コンテスト
#5
一応
学生時代
恩師と本を賭けたのは実話
実際には負け続けました(笑)
注:医学部卒じゃないです(汗)
2019年11月、SSGの庭師となりました
現在は主にnote・TALES・公募でSS~長編を書いています
留守ばかりですみません
【活動歴】
・第2回 日本おいしい小説大賞 最終候補(小学館)
・第31回やまなし文学賞 佳作『雨を知るもの』
・創作大賞2025 入選 『栗と牡丹』
・SSアンソロジー『ベリショーズ』寄稿
・ホラーアンソロジー『ウタ・カタ』寄稿
【刊行】
・第31回やまなし文学賞受賞作品集(山梨日日新聞社)
・栗は月色、こがね色 和菓子処長月堂(朝日文庫)
【note】
https://note.com/akishiba_note
【Twitter】
https://twitter.com/CNecozo
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