幻想妖魔伝【縁鬼】

婚礼後に離縁になるという現象が相次いでいた。
ある日、安倍京明（安倍晴明の末裔）は甥の結婚式に招かれた。
式場に花嫁を俯瞰で睨む醜女がいた。
「縁鬼だな」
京明は袴の袖から人型の紙を取り出して呪文を唱えると、忍者に化け、突風の如く縁鬼の背後に現れた。
京明と縁鬼の目が合う。
「縁鬼よ。招待状はお持ちか」
「笑わせるな。式神に忍者を使うとは舐められたもんだ」
縁鬼は鎌で忍者に襲いかかった！　
この鎌で夫婦の赤い糸を切断していたのだ。
忍者はハート型の手裏剣を投げた。縁鬼の胸に刺さる。すると、着物姿の町娘になった。
「……定吉さん」
忍者は定吉という青年になっていた。定吉は町娘「お絹」の恋人だった。両家に仲を反対され二人は川に身投げした。お絹だけに魔物が宿り縁鬼になった。京明は霊視していて式神に定吉を憑依させた。
やがて二人は手を繋いで昇天した。
結婚式は滞りなく進められ、夫婦の縁は結ばれた。