30
16

―初めまして。今日はよろしくね。
―あの…こ、こちらこそよろしくお願いします。
―ふふ、お相手がこんなおばあちゃんで驚いた?今年米寿なの、私。
―えっと米寿って…えっ、ホントに!?うそ、全然見えない…てかすごく綺麗。やだ、私釣り合わないかも…
―あらまあ、何を仰るの。久しぶりのお呼ばれに、あなたのような若い方とご一緒できてとても嬉しいわ。ああ、出番のようね…

「素敵!これ総刺繍じゃない」
「あ…ひいお祖母ちゃんの帯なんです」
「まあ。じゃあこの帯、織られてからもう100年近いのね。お着物は真新しいけど今時珍しい古典柄だから、帯とよく合うわ。これは着付け甲斐があるわね」

―ねえ愛子さん。もうそんなになるのね。あなた、あなたの娘さん、三人のお孫さんたち、そして今度はひ孫さんよ。みんなの背中を飾れて幸せだわ、私。

鏡に写る笑顔に最初の持ち主の面影を偲びつつ、帯は永い時の流れに想いを馳せた。
その他
公開:20/10/15 18:59
更新:20/12/09 16:39
縁コンテスト #4 愛子さん 私の祖母 拙作『いま、ここにいる奇跡』に 出てくる祖母の嫁入りの時の帯 私の姪の成人式でも使いました #88

秋田柴子

2019年11月、SSGの庭師となりました
現在は主にnoteと公募でSS~長編を書いています
留守ばかりですみません

【活動歴】
・東京新聞300文字小説 優秀賞
・『第二回日本おいしい小説大賞』最終候補(小学館)
・note×Panasonic「思い込みが変わったこと」コンテスト 企業賞
・SSマガジン『ベリショーズ』掲載
(Kindle無料配信中)

【近況】
 第31回やまなし文学賞 佳作→ 作品集として書籍化(Amazonにて販売中)
 小布施『本をつくるプロジェクト』優秀賞

【note】
 https://note.com/akishiba_note

【Twitter】
 https://twitter.com/CNecozo

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容