龍に魅せられて

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白龍の鱗を煎じて飲むと、不治の病であっても必ず治るという。
この世界では草木のように当たり前に生息していた龍だが、白龍は元来希少で、運良く見かけることもありえなかった。
そんな、存在すら危ぶまれるモノを私は探し求めていた。
噂話に尾鰭背鰭が付くのは、いつの時代も同じで、かの鱗には、万能薬のみならず不老不死の力があると、私は人づてに聞かされたのだ。
若かった私はその魅力に取り憑かれ、後ろ指をさされるのも気にせず、白龍を研究し、遂には旅に出た。
世界中、あらゆる場所を訪れた。異文化に触れ、美味い料理を食べ、人とふれ合い、数多の絶景を目にした。
いま思い返しても、鮮明に思い出すことが出来る。白龍が見つからず絶望に打ちひしがれても、美しい世界は私を優しく包み込んでくれた。
ああ、実に素晴らしい日々だった。どれくらい昔のことだったか……



少なくとも私は、ニ千年以上は生きているはずだ。
ファンタジー
公開:20/10/16 17:46
更新:20/10/17 00:18

加賀守 崇緒( 猫屋敷 )

気まぐれなハチワレ猫です。
頭抱えながら文章を考えてます。
スイカと芋と肉と魚に、お米とお酒、ブドウが好き。
よろしくお願いします。

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