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夫はいわゆる「髪結いの亭主」で、理容師資格があるのに「男にべたべた触りたくない」と仕事をしませんでした。それが突然「女性の背中の髭サロンを併設する」と言い出しました。
「背中の髭? あなた気は確かなの?」と何度聞いても、「俺は背中の髭の専門家だ」と、勝手に内装工事を済ませてしまったのです。
「あら、何かお始めになったの?」とお客様に訊ねられ、しぶしぶ夫の話を聞かせると、お客様は「まあ」と絶句なさって「パンフレットあるかしら」とおっしゃるのです。
それから夫のサロンには一日に一人か二人、お客様がみえるようになったのです。夫に「背中の髭ってどういうもの?」と訊ねても「個人情報だ」と取り付くシマもありません。
やがてファッション雑誌の付録に「付け背中髭」がついたり、「この秋はバルボスタイル!」などの文字が躍るようになりました。背中の髭はとてもセクシーでした。
私は夫の浮気を疑っています。
「背中の髭? あなた気は確かなの?」と何度聞いても、「俺は背中の髭の専門家だ」と、勝手に内装工事を済ませてしまったのです。
「あら、何かお始めになったの?」とお客様に訊ねられ、しぶしぶ夫の話を聞かせると、お客様は「まあ」と絶句なさって「パンフレットあるかしら」とおっしゃるのです。
それから夫のサロンには一日に一人か二人、お客様がみえるようになったのです。夫に「背中の髭ってどういうもの?」と訊ねても「個人情報だ」と取り付くシマもありません。
やがてファッション雑誌の付録に「付け背中髭」がついたり、「この秋はバルボスタイル!」などの文字が躍るようになりました。背中の髭はとてもセクシーでした。
私は夫の浮気を疑っています。
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公開:20/10/16 13:58
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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