縁もゆかりもない奇跡

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バイクでカーブを曲がった時点で「あ、死んだ」と分かった。
ブレーキ、クラクション。最後にてりやきバーガーセットにナゲットをつけて、コーラで流し込みたかった。Lサイズの。

ーーピコン、ピコン、ピー
医師という仕事は無力だ。医療は日進月歩でも、この手をすり抜けていく命。心電図が無能をなじるように責めた。

「きっとよくなる。神様はみてるから。」
きっと神は実在しない。いるとしたら、どうして幼い娘をこんな目にあわせたのか。ドナーを待つ難病の娘に母親の私は何もできない。

看護師なんてならなければよかった。夜勤はきついし。婚期は遅れるし。でも…時に奇跡に立ち会うこともある。だからこの仕事は辞められない。

少女が目を覚ますと、母が涙ながら手を握った。看護師と医師が微笑み、春風が薄紅の春のかけらを病室に運ぶ。心臓がトクンと鳴る。手術は成功だ。

「ママ、私、てりやきバーガーセットが食べたい。」
その他
公開:20/10/16 11:02
更新:20/10/16 13:59
ゆかり 本編に一切入れないで 書いてみた実験作 コンテスト用

空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

ずいぶんお留守にしてました。

ひさびさに描いていきたいです!


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