メランコリック・ザーピー

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ゴワゴワのソファ。安アパートの1LDK。散らかったテーブルの上。振り向くと、女はスマホを見ていた。
「パッとしない人生だよな」
「そう?」
俺はため息をついた。
「靴下の穴を縫い付けている途中に針で指を刺して、大事な客先に向かう路上で犬のウンコを踏み、今度はそうはいくまいと鳩のフンを躱したら電柱に頭をぶつけて気を失うような人生」
乾いた口腔にぬるくなった缶ビールの残りを流し込む。
「どういうのがいいのよ」
彼女は欠伸をして眠そうに目を擦りながらどこも見ずに訊いた。
「靴下を縫ってくれる彼女がいて、外回りなんかせずに不労所得で芸術に明け暮れ、気がつくと肩に青い鳥が降り立っているような人生さ」
「たのしいの、それ?」
「さあね」
パサパサになったピザのカケラをかじる。何度も噛んでいるとだんだん柔らかくなって、不健康的な油の旨味が染み出してくる。

朝が部屋を侵食し始めると、俺たちはまた眠った。
その他
公開:20/10/18 07:00
更新:20/10/17 09:55

レオニード貴海( 富んで埼玉(願望) )

小説書きたい症候群に罹患したアラサーITエンジニア兼、二児のダディ。作家志望の人、活字好きな人とゆるーく繋がりたいようなこの頃。

毎日一作目標で書いてます。
(午前7時更新)

気軽にコメントもらえると泣いて喜びます。
よろしくです。

twitter/@takamileovil

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