魔が森

8
5

木の根が歩くに邪魔な程張っていた。
それが折り重なって丘の様になり、体力を削ぐ。
午前の朧気な光。
鬱蒼とした森なのに、怖く感じないのは時間のせいか。

陽が差し込む先。
似た背格好の人間がいた。

こんな所に人がいるとは。
少し話しかけてみたい気がして、足を急がせる。
その距離50mといったところか。
しかし歩けど急げど、追いつけない。
予定よりも深い場所に来てしまっていた。
そろそろ諦めよう、と思ったその時。

人影がこちらを向いた。

似た背格好と思っていたが、服装も似ていた。
いや、何かおかしい。
全く一緒ではないか。

顔は距離のせいかぼやけている。
これも、何かおかしい。
外見は多少認識できる範囲なのに顔だけがわからない。

そういえば、なぜ私は追いつくことだけ考えていたのだろう。
声を張れば届く距離だったのに。

人影がこちらに1歩踏み出した。

私は、慌てて逃げ出した。
ホラー
公開:20/10/13 23:42

雨森れに( 東京 )

色合いの綺麗な物語を紡ぎたい。
シーンごと切り取られた刹那。
不思議、恋愛、ファンタジー、怪談、純猥談などをチラホラと。
中身はお酒が好きなアグレッシブ。

Twitter: https://twitter.com/rainy02forest
note: https://note.com/tettio02
Radiotalk: https://radiotalk.jp/program/61359

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容