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「おい、起きろ」
目を開けると、赤鬼が僕を見下ろしていた。
「そこの川を渡れ」
すぐ隣にある川は濃い霧に包まれ対岸を見ることもできない。
そうだ、俺は死んだんだった。
「三途の川……」
「違う。縁川だ」
「えんがわ?」
「対岸まで行けばお前の愛する人に会える。ただし川幅はその人との縁の強さで決まる。良い縁であればすぐに会えるし、悪い縁であれば何日もかかるだろう。猶予は三途の川を渡るまでの7日間だ」

どれくらい歩いたのだろう。
アドレナリンのせいか、時間の感覚、そして痛覚もなくなった。
休みなく歩いたがもう無理かもしれない。
諦めかけたその時、目の前の霧が晴れ視界がひらけた。
そこには確かに彼女がいた。
「怜奈!」
走りだそうとした瞬間、肩に大きな手がおかれる。
振り返ると赤鬼が立っていた。
赤鬼は申し訳なさそうに首を横に振った。
時間切れか……。
僕は赤鬼とともに冷たい縁川を引き返した。
公開:20/10/13 23:28

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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