心花

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俺には幼い頃から変わったものが視える。
人間の胸のあたりにあるそれは、何というか、花だ。それは咲き誇っていたり、枯れ色にしおれていたりする。
彼の花は水分が無くなり、生気が失われている。

「もう駄目なんだ」
「何でだよ」
「誰とも上手くいかないし、誰とも話したくない。何でこうなっちゃったんだろ」
「昔はよかったって?」
「人生でいくつもある、選ぶ道を失敗した場面に戻れたらなあ」
「何度失敗したっていいだろ。皆間違えるんだ。でもそこからやり直せばいい。俺も力になるよ」
俺の口から粒状の光がいくつか出て行くのが見えた。それは彼の花に次々と吸い込まれて、消えていった。
「お前は味方でいてくれるんだな」
一人の人間に会って、ずっと求めていた言葉を言われたよ。
そう言った彼の花を見ると、器に入りきらず、咲きこぼれていた。
「美々しい花だなあ」
ファンタジー
公開:20/10/13 23:24
更新:20/10/14 12:57

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