追憶タイフーン
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先週、沖縄のはるか東の海上に発生した台風は「佐藤」と名付けられた。日本人も名前になるんだ、と誰もが思い、しかも苗字なんだと頬を緩め、そして自分の知り合いにも佐藤がいたことを思い出した。
ニュースの衛生写真を見ながら、皆がそれぞれの佐藤を思い浮かべた。佐藤たちの顔は渦の中心で重なり合い、混ざり合ってひとつの大きな顔になった。
まとまったのは顔だけではない。全国各地で漏れた「佐藤…」という呟きは、もはや倍音となって響き始めていた。呼び寄せられるように台風は進路を変えた。列島縦断コースだ。
当の佐藤本人たちは、ここ数日のうちに台風佐藤と出会うだろう。そして、打ちつける暴風雨から自身の影を拾い上げ、きっと、静かな祈りを捧げるに違いない。
皆さん、どうかご無事に。
台風一過の…と朝のニュースが言う。ぼうっとした頭で記憶を探ると、消え行く直前の佐藤の面影が、秋晴れに微笑んでいた。
ニュースの衛生写真を見ながら、皆がそれぞれの佐藤を思い浮かべた。佐藤たちの顔は渦の中心で重なり合い、混ざり合ってひとつの大きな顔になった。
まとまったのは顔だけではない。全国各地で漏れた「佐藤…」という呟きは、もはや倍音となって響き始めていた。呼び寄せられるように台風は進路を変えた。列島縦断コースだ。
当の佐藤本人たちは、ここ数日のうちに台風佐藤と出会うだろう。そして、打ちつける暴風雨から自身の影を拾い上げ、きっと、静かな祈りを捧げるに違いない。
皆さん、どうかご無事に。
台風一過の…と朝のニュースが言う。ぼうっとした頭で記憶を探ると、消え行く直前の佐藤の面影が、秋晴れに微笑んでいた。
ファンタジー
公開:20/10/13 22:54
更新:20/10/13 23:01
更新:20/10/13 23:01
400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。
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