水瓶亀のフロンティア

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水瓶亀は主に砂漠地帯のオアシスに生息するリクガメの一種だ。背中の甲羅が瓶のような形状に発達していて、そこに水を溜める習性がある事からそう呼ばれている。
甲羅に溜めた水は乾燥した砂漠地帯にあっても水瓶亀の体を潤し、水場を離れていても、ある程度の行動を可能にする。年を経た亀であるほど瓶は大きくなり、群れのボスともなる個体はおよそ2リットルほどの水を溜め込む事ができる。

水瓶亀にはもう一つ変わった習性がある。
群れを形成する亀の数が一定を超えると、ボスがたった一体で住処のオアシスを離れるのだ。大きな瓶を水で満たして長旅に備え、未知なる広い砂漠へ足を踏み出していく。群れのボスの座を若い個体に託し、自らはまた別のオアシスを目指すのだ。
もちろん広い砂漠にあって全ての個体が次の住処に辿り着ける訳ではない。それでも水瓶亀は旅に出る。

遥かなフロンティア。彼らは種として、常に新天地を求めている。
SF
公開:20/10/13 22:13

エビハラ( 宮崎県 )

平成元年生まれ、最近はショートショートあまり書いていませんでした汗
ログインできてよかったぁ…

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