秋箱

4
6

 それはキャラメルの箱と同じ大きさと形の箱だった。
 パッケージに描かれた絵が素敵だった。
 残念ながら、中は空っぽ。
 ところが、翌日振ってみたらカラカラと音がする。
 開けると中には向日葵と朝顔の種が入っていた。
 次に開けた時は、まだ青みの残るドングリが入っていた。
 開かぬススキの穂、ムラサキシキブ、紅玉のような柘榴の実。
 赤蜻蛉が飛び出して来たこともあるし、金木犀の香りだけの時もあった。
 
 ところが、ある日突然、その箱が燃えた。
 中に入っていた焚火が原因だった。
 開けた途端、紅葉のような真っ赤な炎が箱に燃え移って、あっという間に全体を包み込んだ。
 慌てて窓から地面に捨てる。
 既に燃え尽きていた箱は細かい灰になって、土の上に散らばった。
 白くなった息の向こうに見えるそれは、初めて降る雪のように、淡く頼りなく、冷たい風に飛ばされていった。
 
 
ファンタジー
公開:20/10/13 21:09

堀真潮

朗読依頼等は、お手数ですがこちらまでご連絡ください。
Twitter  @hori_mashio
tamanegitarou1539@gmail.com

 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容