ありったけの愛をあなたに

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鳥居の向こう側で一礼して参道の端を女が歩いてくる。手水屋で手口を清め、一度こちらを見た。思いがけず熱視線で台座から落ちそうになった。ーー今のは狛犬ジョークだ。
女は拝殿に向かい二礼二拍手し、熱心に自己紹介をしたのち一礼した。
私の前で一礼すると、あの熱視線を向けてくる。
写真を撮りたいと、良いぞ、好きに撮れば良い。玉乗りしているのは、関東ではあまり見かけないのか。え、臀部、燃え。え、萌える、全く分からんがそんな所も撮るのか。可愛い、はあ、そのよう文化があるのか。獅子にも伝えたからもう好きに撮れ。
女は生き生きと右往左往としながら写真を撮っている。まあ、礼を欠かなければ許してやるがな。うむ、また来るが良い。


お、あの女はーー家族を持ったのか。娘、手水屋でびしょ濡れになってるぞ。風邪引くなよ。
「ママ抱っこ!お尻なでなで!」
ーーお主のDNA、しっかり引き継いでるな。
ファンタジー
公開:20/10/12 22:59
獅子 狛犬 阿吽 お世話になっております

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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