木もれ陽

2
2

小さな小さな子どもがいた。おかっぱ頭の黒髪に天使の輪が乗っかっている。

おじいちゃん、おばあちゃんと一緒に近所の大きな公園を散歩するのが一日の楽しみだった。

その公園の長い長い並木道を歩くのが、特に楽しみだった。

夏は緑の木々の隙間から差し込む光がまぶしく、涼やかだった。冬は枯れ葉と枯れ葉をつなぐ光が柔らかく、暖かかった。

「気持ちいいな」

小さな子どもがふとつぶやくと、おじいちゃんとおばあちゃんは教えてくれた。

「これはね、木もれ陽って言うんだよ」

やがて、小さな子どもは大人になり、結婚し、新しい命を授かった。

おじいちゃん、おばあちゃんは、もういない。

そのうち天使の輪が乗っかる我が子を、そしていつか生まれる孫を、公園に連れてゆき、木もれ陽のことを教えてあげたいと思う。

小さな小さな自分を、木もれ陽のように包み込んでくれたおじいちゃんとおばあちゃんのことも。
その他
公開:20/10/12 18:18

ふみなか( 東京 )

40代半ばの会社員。家族は妻、中3息子、小6娘。つらつらと文章をつづるのが好きです。読んでいただけたら嬉しいです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容