不思議なご縁

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「またいらしてくださったのですね」
そう声をかけられ、僕は目を丸くする。
「初めてここには来ましたが」
「以前にもご利用いただいていますよ」
そう言って店長が珈琲を淹れにくる。その味は、確かに懐かしいものだった。
「前に一回来たのかな。不思議な縁ですね」
「ご縁があれば、いつでもまた」

彼はいつも少し不安げに入店する。それは早朝だったり閉店間際だったりするが、いずれにせよ毎日彼は来てくれる。
「またいらしてくださったのですね」
事故のせいで彼は、以前のことを覚えられない。1日経てば忘れてしまう。彼にとって全ては、夢のように儚いことだ。
それでも毎日来てくれる、親友の貴方。記憶がなくても、欠かさず私に会いに来る。

「不思議な縁ですね」
お決まりの台詞を呟いて、困ったように笑う。そして私も笑い返す。
「ご縁があれば、いつでもまた」
貴方が来てくれる限り、私は一杯の珈琲を淹れ続けるだろう。
青春
公開:20/10/12 13:41
「縁」コンテスト これからもいつまでも

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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『枇杷の独り言』
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