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私は昔から貧乏だった。
それは一言では説明できないくらい辛いものだ。
「どれだけ貧乏なのか?」と問われれば、迷わず私はこう答えるだろう。
「ホームレスでさえ持っている住む家を私は持っていない」と。
なので食べ物と言えば道端に生えている雑草や木の実を拾い、口にしていた。
着るものは当然ゴミ袋だった。雨露を防げるからだ。寒くなれば地面に穴を掘り、首だけを出して暖を取っていた。木の葉は意外に暖かいのだ。
だから、私は財布という物を持った事が一度もない。
仮に見せられても「それって食べられるのかい?」と尋ねるだろう。
私にとって生きる上で食べられるか食べられないかの二択は重要なのだ。
選択の余地はなかった。
要するに私は日本に住んでいながら硬貨や紙幣に縁が無いのだ。
もう一度言おう、私は日本にいながら日本円に縁が無いのだ。
「エ~ン、エ~ン」と泣いたところで誰も助けてくれない絶円状態なのだから。
公開:20/10/13 18:40
更新:20/10/13 20:00

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