縁卓

その女はジョークグッズの店に立ち寄った。
どの商品もジョークにあふれていた。
キレやすい人用ハサミ、サバを読む体重計など、手に取るたびにニヤける。
女は電卓らしいものに目が止まった。
『縁卓』と書かれている。数字と文字が入力できるようだ。
「それ、あなたの名前と気になる人の名前を入力すると、縁が結ばれる確率が出るんですよ。僕で試してみては？」
「そうね」
「お名前は？」
「金山ゆかり」
どう計算しても、あの店員を超える男はいない。彼の名前を入力すると、最も相応しい数字が出る仕組みなのだ。
「ご縁があるみたいね。あなたと」
彼の計算通りのようだ。
女は彼と交際を始めた。

女はプログラマーで縁卓のカラクリを見抜いていた。少し手を加えれば売れると確信した。特許を申請して権利を獲得した。
計算高いのだ。

女から連絡が取れなくなった。
「冗談だろ」
縁卓が売れなくなって、￥もゆかりもなくなった。